こんにちは!
大学受験エリートのSuuです。
高校数学のみどころ、勉強法、落とし穴などを紹介する
るるぶ高校数学のシリーズです。
今回は、
数Ⅱ 式と証明 その2 二項定理(使い方編)
です。
前回に引き続き、二項定理について扱っていきます。
前回は、
二項定理の式の見方
二項定理の覚え方
に注目してお話しました。
実際、二項定理を習得する最大のハードルは
「式の複雑さ」にある気がします。
式の背景や証明を理解する以前に、
その数式が言わんとしていることは何か?
何を主張している式なのか?
を把握できないと、覚えることも使うこともできません。
「式の見方」について、前回の記事で丁寧に解説したので、ぜひ参考にして下さい。
では、いよいよ二項定理の活用に入っていきましょう。
ポイント① 「場合の数」を使った式の証明を理解しよう
二項定理の式は複雑ですが、主張していることは1つで、
(a+b)nを展開したときの、an-kbkの係数はnCk
ということです。
かなり分かりにくいので、n=5,k=3として考えます。
(文字が多くて困ったときは、いくつか具体的な数におきかえて考えるのが、
数学の勉強のコツです!)
(a+b)5を展開することを考えましょう。
(a+b)(a+b)(a+b)(a+b)(a+b)
を計算するのですが、このときにa2b3の係数は何になるか、がテーマです。
5個ある(a+b)の中から、aを2回、bを3回つかってかけ算したものがa2b3です。
(a+b)(a+b)(a+b)(a+b)(a+b)
(a+b)(a+b)(a+b)(a+b)(a+b)
(a+b)(a+b)(a+b)(a+b)(a+b)
……
『5個の(a+b)の中から、aを2個、bを3個選ぶ』
ということを、色分けで表現してみました。
このような選び方が全部で何個あるのか?
を考えると、
『5個の(a+b)の中から、bを選ぶものを3個決めればいい』
ことから、5C3通り。
このような考え方が、二項定理の証明で使われるアイデアです。
このアイデア自体は重要なため、繰り返し勉強しながら、
習得していきましょう。
二項定理は、最初は「式の暗記」から入り、
その後「式の導出」を理解するのがオススメです。
そして演習を通じて、
「忘れてもいつでも思い出せる」
状態に持っていくのがよいと思います。
ポイント② パスカルの三角形を、自分でかいて遊んでみよう
二項定理とセットで、パスカル(Pascal)の三角形も教わると思います。
パスカルの三角形は色々と有用です。
『(a+b)7を二項定理で展開する』ような場面があれば、
パスカルの三角形をかいた方が早いですよ。
算数チックな遊びではありますが、問題で必要になるたびに、
パスカルの三角形をかくのがオススメです。
何度かやると、サラサラとかけるようになっていきます。
そして、余裕のある人は色々研究してみましょう。
例えば、
「偶数だけ色を塗ってみる」
「3の倍数だけ色を塗ってみる」
「横の列の和を計算してみる」
などなど。
私の師匠によると、パスカルの三角形の性質には「未解決問題」がいくつもあるそうです。
オリジナルな発見があったら、ぜひ教えて下さいね。
ポイント③ 二項定理に、色々代入して遊んでみよう
(a+b)n=nC0an+nC1an-1b+……+nCn-1abn-1+nCnbn
のaとbに、色々な数字を代入するのも面白い遊びです。
有名どころは、a=b=1とかですね。
左辺は2nになり、これが見たことのない式で表せます。
また、そうして得られた結果を、今度はパスカルの三角形で視覚的に考えてみる……
二項定理は色々と遊べるところなので、興味のある人、余裕のある人は遊んでみましょう。
遊んでいるうちに、二項定理やパスカルの三角形を覚えてしまうかもしれませんよ。
ポイント④ 0乗、1乗、2乗、……「たくさん乗!」と捉えて実戦で応用する
二項定理は抽象度の高い公式です。
まずは、具体的な問題、簡単な問題で練習したり、
遊んだりして「公式に慣れる」ことを目標にしましょう。
そのうえで、大学入試の数学で自在に応用することを目指す人向けのアドバイスをしておきます。
整数問題に応用したり、極限の計算で応用したり、二項定理は色々なところに顔を出します。
二項定理を実戦で使うときの呪文があるので、コッソリ伝授しますね。
0乗、1乗、2乗、……「たくさん乗!」
です。
二項定理を実戦で使うときの感覚はコレです。
1つだけ例をだすと、「奇数は何乗しても奇数」ということを確かめてみます。
奇数の一般形1+2kを、n乗して強引に二項定理でバラします。
(1+2k)n
=1n+nC1×1n-1×2k+nC2×1n-2×(2k)2+……+(2k)n
最初は、なんのことだが分かりませんね。
まずは、青字のところに注目しましょう。
2kが、
1乗、2乗……たくさん乗!
となっていきます。
そうすると、背景を黄色くした部分は、
「みんなまとめ偶数じゃん」
と分かるので、
1n+(偶数)の形だから、(1+2k)nは偶数
とわかります。
二項定理を大学入試数学の実戦で使うときは、このように、
0乗部分、1乗部分、2乗部分、……「たくさん乗」の部分
と分けるイメージで使うのがコツです。
ポイント⑤ 多項定理は、「導き方」を理解しよう
二項定理から少し踏み込んだ定理として、多項定理も習うかもしれません。
多項定理については、ポイント①の『「場合の数」を使った考え方』の延長です。
ポイント①の内容が掴めれば、多項定理をわざわざ覚えなおす必要はありません。
1つアドバイスをすると、
n!/p!q!r!
は、
nCp×nCq
と同じです。
(場合の数の記事では、後者の形式で学ぶことをオススメしました。)
いかがだったでしょうか。
二項定理は、まずは「式の意味をつかんで、覚える」が最初の壁です。
式の意味が分かって、覚えられたら、
この記事の内容にそって少しづつ遊んでいきましょう。
手を動かすうちに、段々と感覚がつかめるぐらいでOKです。
ハイレベルを狙う人は、ポイント④の呪文を意識して、
応用問題に取り組んでみましょう。
二項定理は、抽象度の高い式です。
その分汎用性があり、
入試の実戦でも十分な威力を発揮するいい公式です。
時間はかかりますが、ジックリ自分の武器にしていきましょう。