こんにちは!
大学受験エリートのSuuです。
高校数学の見どころ、初見では分からない勉強のポイントなどを紹介していく
るるぶ高校数学のシリーズです。
今回は、
数Ⅰ 集合と論理 その2 命題
です。
前回ご紹介した、集合の学習はいかがでしょうか。
集合の勉強、面白くない!
という声が多いかもしれません 笑
そんなところスミマセンが、まだまだ面白みのない勉強が続きます。
今回は「命題」です。
数学の勉強全体を通じて、非常に重要な内容です。
ですが、その分すぐに習得するのは難しいです。
「命題」で大事なテーマは、
どれだけ数学脳になれるか?
と言っていいでしょう。
数学脳とは何か? その心構えについて、お伝えしたいと思います。
ポイント① 数学では、「正しいか、正しくないか」が明確なものしか相手にしない!
数学の話をする前に、ちょっとした小話を。
命題→「(命がけで取り組むような)重要課題」
というニュアンスで「命題」が使われることがあるそうですが、
これは誤用らしいです。
また、数学でいう「命題」には、上記のような意味合いはまったくありません。
日常の感覚と混合しないよう、最初に注意しましょう。
さて、数学で言う「命題」とは、
「正しいか、正しくないか」が明確に判断できる主張、ことがら
です。
前回の集合の記事でも同じことを言いましたが、
100は大きいか?
は個人の主観に依存することがらで、命題とは言いません。
ですが、「命題」については別の視点で理解する方がいいです。
数学では、「正しいか、正しくないか」が明確なものしか扱わない!
という、数学世界の意思表示だと思いましょう。
100は大きいか?
というのは、曖昧です。
このようなものは、数学世界では興味をもたないということです。
100は1000より大きいか?
100より大きい数は存在するか?
という、正しい・正しくないが明確なものだけ相手にするのが数学世界です。
そして、この感覚が数学脳の第一歩です。
自分は、「正しいか、正しくないか」が明確なものしか考えない!
という感覚が、数学脳では必要になります。
ポイント② 「自分にとって都合の悪い状況」を積極的に想像しよう!
「100は1000より大きい」
のように、それ単独で真偽が判定できる命題もあります。
(もちろん、この命題は偽ですね。)
ただ、命題・論理で重要なのは
P ならば Q
の形の命題です。
これは、
Pが成り立つとき、必ずQが成り立つ
ときに真、そうでないときに偽となる命題です。
この、『P ならば Q』の命題について、真偽を判定するのが最初の壁です。
このときに大切なのは、
都合の悪い状況を、積極的に想定できる
という能力です。
例えば、
x2=1 ならば、x=1
の真偽を考えてみましょう。
x2=1が成り立つとき、x=1が必ず成り立つか?
を判定すればいいのですね。
『x2=1が成り立つときには……確かに、x=1があるな!
OK! 真だ!』
と考えてはいけません。
『x2=1が成り立つときは……確かに、x=1があるな……
でもまてよ、x=-1というケースもあるじゃないか。
このときはx=1とはならないから、ダメだ。 偽だね。』
と考えられるよう、訓練するのがこの単元です。
x=1という、自分にとって都合のいい情報に惑わされてはいけません。
都合の悪いほう、悪いほうへと思考を伸ばしていき、
x=-1という都合の悪い状況を想定する力が必要になります。
この、「都合の悪い状況を想定する」能力は、大学受験でも非常に大切になります。
文字で割り算をするとき
→「割る文字が0」という悪いケースを想定する
不等式の両辺に文字をかけるとき
→「文字が0や負の数」という悪いケースを想定する
という処理は、入試の実戦で頻出です。
このような、「都合の悪いケースを想定する」思考が、大学受験の数学で大切です。
そしてこの、
自分にとって都合の悪い状況こそ、積極的に想定する
のが、数学脳の感覚です。
ポイント③ すべての場合を考えつくせ!
「自分にとって都合の悪い状況を想定する」と言いました。
このために必要なのは「自分は間違えているかも?」という意識です。
都合の悪い状況を見落としていないか?
(あるいは、都合のいい状況も見落としていないか?)
……そう意識していくと、
「すべての場合を、キッチリ考えつくす」
ことの大切さに気付きます。
この、自分に都合の悪い状況も含めて、
すべての場合を考えつくす
というのも、数学脳の感覚です。
ポイント④ 集合を使って状況を整理しよう
ここからは、上級者向けの話題になります。
y=x ならば x=y=0
について考えてみましょう。
この命題自体は、偽です。
x=y=1という、
『y=x だけど、 x=y=0 にならない具体例』
が見つかるからです。(こういうのを、反例といいます。)
このくらいの命題の真偽判定なら、少し考えればできることも多いです。
ただ、実戦ではもっと複雑な命題が出てきます。
複雑な命題でも正確な真偽判定するためには、
すべての場合を考えつくせばいい
のです。
y=x ならば x=y=0
について、すべての場合をキッチリ考えつくしてみましょう。
このときに、『集合』を使って処理するのがテクニックです。
y=x となるすべての(x,y)は、
{(x,y)|y=x}
と集合で表すことができます。
おっとこれは……前回の記事で紹介した、
関数y=xのグラフですね。
ふむふむ、図形的には直線ですか。
一方、
x=y=0 となる(x,y)を集合で表すと
{(0,0)}
ですね。(要素が1つだけの集合です。)
これは……図形的には原点を表しますね。
さて、
P ならば Q
という命題が真なのは、集合の言葉で言うと
Pの集合⊂Qの集合
となり、集合Qの方が大きいという意味です。
y=x ならば x=y=0
の真偽を判定したいなら、対応する集合にとりかえた
{(x,y)|y=x} ⊂ {(0,0)}
の真偽を判定すればいいのです。
これは、明らかに偽ですよね。
直線よりも点の方が大きい! という主張ですから、
直感でオカシイと分かります。
このように、集合を使ってキッチリ整理する手法は、
設定が複雑な問題ほど効果を発揮します。
命題の真偽判定は、数学を扱う上で非常に基本的な技能です。
苦手だ……と言う人は、数学脳の感覚が身についていない可能性が高いです。
正しい、正しくないが明確なものしか扱わない
自分にとって都合の悪い状況こそ、積極的に考える
すべての場合を考えつくす
の3点が、命題の真偽判定のベースとなる数学脳の感覚です。
一朝一夕で身に着けるのは大変なので、
今後の数学の勉強すべてを通じて、この感覚を磨いていきましょう。