「偏差値60以下の私立中学に入れるなら、公立中学に行かせた方が良い」など、その真偽は別として、何かと一定のラインにされがちな「偏差値60」。
中学受験における偏差値60とは、実際にどれくらいのレベルのことなのでしょうか。
また、偏差値60とはどういった中学校があるのか、どうすれば偏差値を60位まで上げられるのか等を、具体的に見ていきましょう。
「偏差値」とは?
漠然と「偏差値70なら、かなり頭が良い」位のイメージで語られることが多いかと思いますが、そもそも「偏差値」とは、具体的にどういう意味なのでしょうか。
偏差値の定義
偏差値とは「ある集団における、自分のレベル・位置」を指します。
つまり、属する集団のレベルによって「偏差値60」の意味合いも違ってくる訳です。
全体のレベルに左右される
トップクラスの中での偏差値60と、中間クラス内での偏差値60では、当然、前者の方が上という考え方になりますね。
公開模試でも受ける人の実力が違ってきますので、「○○模試では偏差値63だったのに、××テストでは偏差値58だった」ということも十分起こり得ます。
その試験を受けた受験者全体の学力によって数値が左右される相対的な要素があるので、多少の数値の良し悪しに囚われすぎないことも大切です。
偏差値60とは
偏差値の数値についてですが、基本的に25から75までの間の数で表示されます。
ですから、大まかに言えば偏差値50が中間として、偏差値60は中間よりやや上、というイメージですね。
中学受験における偏差値60とは
中間よりやや上、とイメージされがちの「偏差値60」。
では中学受験においては、実際どの程度の位置になるのでしょうか。
受験生全体の中では…
偏差値60前後のお子さんは、受験生全体の約15%程度と言われています。
ここでもう一度、偏差値の基準を思い出してみましょう。
「ある集団における、自分のレベル・位置」」ですね。
この場合の「ある集団」とは、「中学受験をする子ども」を指します。
小学6年生全体では…
中学受験する子どもは、小学6年生のうちの、約2割と言われています。
「中間よりやや上」といっても、小学6年生全体の中では相当上のレベルに位置していることは、頭に入れておきましょう。
ちなみに、トップクラスと言われる偏差値70以上のお子さんは、受験生全体の約2%と言われています。
大半が受験する高校受験時の偏差値とは、数値の意味合いが違ってきますので、その印象で考えないように気をつけましょう。
偏差値60前後の中学校
では、偏差値60あたりの学校は、どういった学校があるのでしょうか。
年によって前後しますが、以下に挙げる学校が比較的偏差値60~60前半を保っています。
男子校
成城中学校・暁星中学校・明治大学付属中野中学校などが該当します。
女子校
共立女子中学校・香蘭女学校中等科・東洋英和女学院中学校などが挙げらられます。
男女共学
共学になると、成蹊中学校・桐光学園中学校・国学院大学久我山中学校・東京学芸大学付属小金井中学校などがあります。
殆どが、中学受験を考えていれば一度は名前を聞いたことがある学校ではないでしょうか。
卒業後の進路は、エスカレーター式で内部進学、もしくは難関大学へ…というケースがが多いようです。
偏差値60以上のお子さん
偏差値が60以上のお子さんには、共通する部分があります。
基礎ができている
試験では、習ったことがそのまま出るのではなく、形を変えて出題されることがあります。
このケースに対応できるのが偏差値60以上のお子さんです。
なぜ対応できるかというと、暗記しているのではなく理解しているため、応用が利くからです。
中学受験の試験は独特のパターンをもつ問題が多く、それを解くための知識を得たり、思考回路を作るのには数をこなす必要があり、相応の時間がかかります。
一般的に、4、5年生あたりから土台作りを始め、6年生の時点でスピードと正確性の向上、論文、答案作成や希望校に応じた受験対策などの対策に入ります。
小学校中学年ごろから受験準備を始める方が多いのも、このあたりが理由でしょう。
勉強スタイルが確立している
まだまだ遊びたい盛りの年頃ですが、偏差値60以上のお子さんは、1日のうちの学習時間を数時間、きちんと確保しています。
受験における知識・解答テクニックは数ヶ月で身に付くものではありません。
また、人間の集中力には限界がありますので、漠然と進めていても効率が良くありません。
長期的な視点でスケジュールを立て、逆算して予定を組む必要があります。
この月の模試ではこの位の偏差値を目指す、だから今週はこの単元をマスターする、そのためには今日はこのページまで問題を解いて答え合わせをする…と自分に合った計画を立て、実行できています。
苦手分野が少ない
個人差はありますが、偏差値60以上のお子さんは、基本的に大きな苦手分野が少ないです。
苦手分野があると、その分野から出題され、配点が大きかったとき、試験結果に大きな影響が出てしまうからです。
授業で理解できなかった部分は、その日のうちに先生に聞くなどして、早めに解決しています。
また、復習の仕方が丁寧です。
試験で解けなかった問題を復習する際、知識不足だったのか・解き方を知らなかったのか・ケアレスミスだったのか等、間違えた原因を把握しています。
ですから、次に似たような問題が出題されたときには、解けるようになっているのです。
こうして細かいことを積み重ねていけば、苦手分野はある程度克服していきます。
勉強を楽しんでいる
受験勉強とはいえ、新しい知識を得る・考え方を学ぶということは、本来は楽しいことでもあるはずです。
問題を解くだけでなく、出題された文章題の出典となる文学作品を読む、知らなかった時事用語を調べる等、自身の関心があるテーマを深めています。
受験を始めるきっかけは親御さんであることが多いのですが、勉強をすすめるうちに「誰のためにやっているのか」という意識が芽生えます。
「親にやらされている」という意識のお子さんは少ないように見受けられます。
こうした日々の姿勢が、偏差値の高い学校で出題される、「考える力を問う問題」への対応力を自然とつけさせているのでしょう。
偏差値60以下の学校はどうなのか?
もちろん、偏差値60以下の私立中学もたくさん存在します。
私立独自の教育
教育理念のほか、カトリック・プロテスタント・仏教といった宗教的な基盤、きめ細かい面談や特別クラスの編成、外国人教師による外国語などの特殊なカリキュラムなど、私立独自の教育が受けられます。
大学への内部進学・部活動への取り組み方など、その学校が何を重要視しているのかはデータにも表れますが、学園祭などに行くことで、生徒の表情がよく見えます。
同じ家庭環境のお子さんが集まる
また、偏差値が同程度であるということは、それだけの学力を育む時間・経済的余裕がある家庭環境で育ってきたということでもあります。
家庭環境が似ているお子さんが集まっている分、概してトラブルが少ないのも私立の長所といえるでしょう。
ほか、中高6年間を同じメンバーで過ごし、教師の異動も基本的に行われないため、結びつきが強くなるのも私立の特徴です。
偏差値以外の特徴がありますので、一概に「偏差値60以下なら公立へ行った方が良い」とは言い切れないのではないでしょうか。
まとめ
偏差値60程度に到達するまでには、相応の時間と努力が必要でしょう。
小学校では教わらない知識・考え方が問われます。
受験準備を始めたばかりでは、お子さんの偏差値に驚いてしまうかもしれませんが、「地頭が良くないのだろうか」と心配しないで下さい。
習得するまでに時間がかかる分、到達してからは大きく学力を落とすことはほぼ無いでしょう。
受験までのスケジュールを組み、一喜一憂せず、安定した学力を保てるようになると良いですね。