特待生と聞くと、スポーツや芸術方面で優秀な成績を残した生徒に対し、高校や大学で採用されている制度だと思っている方も多いのではないでしょうか。
実は中学受験においても、一定の条件をクリアした生徒の入学金・授業料を免除する特待生制度を設けている学校が増えてきたのです。
その数も、都内では全体の半数以上といわれています。
ただでさえ塾や家庭教師の費用など、受験にはお金がかかります。
入学後の出費が抑えられるとしたら、家計は大変助かりますよね。
このような特待生制度が増えてきた背景や、制度の内容、制度を利用する際のメリット・デメリットなどについて考えていきましょう。
なぜ特待生制度を設けているか
私立中学の場合、教育機関であると同時に、学校法人という側面ももっています。
入学してくれる生徒がいなければ、長期間にわたる経営が成り立ちません。
さて、みなさんはどのように受験する中学校を選ぶでしょうか。
ポイントは教育理念・雰囲気・通学面などさまざまですが、可能な範囲で偏差値の高い学校を狙う方が多いでしょうし、卒業生の進学先などもチェックされますよね。
高い学力をもつ生徒に入学してもらうことで学校全体の学力が底上げされ、それに伴い、難関大学合格の確率も上がっていくはずです。
偏差値が上がって進学率が高まると、さらに優秀な生徒が集まってくる…そのような経営モデルを目指す中堅校が、特待生制度を設けることが多いようです。
どうしたら特待生になれるのか?
それでは、どのような流れで学校から特待生に選ばれるのでしょうか。
大きく分けると以下の2パターンとなります。
・通常受験の上位得点者に入る
・特待生枠の入試(特待生選抜入試など)に合格する
2つを併用している学校もあるようです。
ほか、適性試験や面接を設けたり、 英検○級など、資格試験合格者を優遇するケースもあります。
通常受験で選ばれるケース
通常受験の場合は合格者の中から成績優秀者が選ばれます。
ですから、始めから特待生を狙っている訳ではなく、学校側から声をかけられたらラッキー、という感覚でしょうか。
得点○%以上など点数の制限は公表されていることがありますが、上位○名などの人数詳細までは明かしていないことが多いようです。
特待生枠の入試で選ばれるケース
特待生枠の入試については、通常受験とは別日、または別時間に試験が実施されます。
他の学校の試験日・試験時間と重複していなければ、併願が可能です。
いわゆる「すべり止め」を検討する際に参考にするのもよいかもしれません。
いずれにせよ、狭き門であることには変わらず、相応の学力が必要になります。
最近では精度の高いプレ入試なども行われていますので、現状でその学校に対し、どの程度の学力レベルなのか確かめるのもよいでしょう。
特待生制度の内容は?
内容は主に入学金・授業料・施設費などの免除です。
免除期間は初年度のみ・中学校の三年間・中学校から高校卒業までの六年間など、学校によって違います。
免除される割合も、全額免除・半額免除・○万円支給など様々な方法がとられています。
これらを複数組み合わせている学校もあります。
特待生制度のメリットは?
では実際に、特待生制度のメリットはどのようなものがあるのでしょうか。
ここでは、家計への影響、お子さんへの影響について見ていきましょう。
家計への影響
入学金・授業料・施設管理費などを含めた私立中学校の学費は、1年を通して100万前後になることが多いでしょう。
公立中学校の10倍近くになるといわれています。
その他にも、寄付金・制服代・部活の活動費・マナー教室・海外へのホームステイ等々、私立は何かとお金がかかるため、経済面への影響は大きいでしょう。
お子さんへの影響
また、お子さんによっては自分の努力の結果、特待生として学校に認められているということをモチベーションにできるかもしれません。
ほか、最近では小学校でもマネーリテラシーの授業を行うなど、金銭面での教育が始まっています。
学費について話し合うことも、お子さんの経済観念を育てることに繋がるかもしれません。
デメリットは…?
一方、デメリットも存在します。
成績を維持できるのか
特待生制度は、たとえ中学校から高校卒業までの6年間と決まっていても、定期試験などの成績をもとに見直し・更新されるケースが多いでしょう。
学力に余裕があれば成績を維持できますが、お子さんによっては「成績を落としたら特待生でなくなってしまう」というプレッシャーを負担に感じるかもしれません。
また、特別クラス等の周りに分かる形であった場合、落ちてしまったときに周囲の目が気になる子もいるでしょう。
学生は勉強が本文とはいえ、交友関係や部活動といった、その時代にしか得ることのできない大切なこともあります。
あまりにも成績ばかりにとらわれるようになると、お子さんのためにはならないかもしれません。
保護者側も、特待生による学費免除をベースに無理のある計画を立ててしまうと、途中から外れた場合、それまで支払わずに済んでいた学費を重く感じてしまうかもしれません。
お金に代えられない部分
また、確実にトップクラスを維持できるお子さんであれば、より高い学力を要する学校に入る能力がある訳です。
偏差値のことだけではなく、トップ校は学習環境・価値観などが違ってくる場合もあります。
長い目で見た場合、どちらに入学した方が良いのかは悩ましい選択でしょう。
まとめ
通常入試の成績優秀者が選ばれるケースであれば、あえて断る理由は薄いのですが、意図的に特待生制度を目指す場合、お子さんの学習意欲や環境に大きくかかわることになります。
経済面だけでなく、総合的に考え、当事者であるお子さんとコミュニケーションを取った上で、特待生制度について検討してみると良いのではないでしょうか。