こんにちは!
大学受験エリートのSuuです。
高校数学の勉強のポイント、落とし穴などを紹介する、
るるぶ高校数学のシリーズです。
今回は、
数Ⅰ 集合と論理 その4 対偶と背理法
です。
→前回
前回は、命題の否定について紹介しました。
命題の否定は機械的にビシバシと書けますか?
前回の記事で「機械的に書くためのポイント」を紹介しているので、
参考にして練習しましょう。
今回は、命題の性質を利用した「証明テクニック」の紹介です。
『心構え』がメインの前々回、『機械的な暗記』がメインの前回を乗り越え、
ついに
大学入試数学 実戦で使うテクニック
の内容です。
具体的には、
対偶を利用した証明
背理法
の2つの証明テクニックを紹介します。
ポイント① 『P ⇒ Q』の証明は、『Qでない ⇒ Pでない』を証明してもいい
数学で出題される証明問題は、基本的に
『(仮定)⇒(結論)』
の形です。
「~のとき」などと書いてあったら、その前部分が仮定ですね。
いずれにせよ、
『P⇒Q』
の形の命題を証明することになります。
ここで、
『Qでない ⇒ Pでない』を証明すれば、
『P ⇒ Q』を証明したことになる
というルールがあります。
『(仮定)⇒(結論)』を示すには、
『(結論の否定)⇒(仮定の否定)』を示せばいい
ということです。
命題『P⇒Q』に対して、『Qでない⇒Pでない』という命題を
対偶
と言います。
そのため、上記の証明法は
「元の命題の、対偶を証明する」
と呼ばれます。
この「対偶の証明」は、非常に有効な証明テクニックです。
ポイント② 対偶を使って、『使いにくい仮定』『示しにくい結論』を回避する!
対偶を使って証明をすると、
『(仮定)⇒(結論)』
の代わりに
『(結論の否定)⇒(仮定の否定)』
を証明することになります。
証明のスタートとゴールが全然違うものになっていることに注目しましょう。
対偶を使う目的は、ここにあります。
元の仮定(スタート)や結論(ゴール)の条件が扱いにくいときに、
扱いやすいスタートとゴールにとりかえて証明する
のが対偶をつかうポイントです。
具体的な例は、問題演習を通じて学んでいきましょう。
ただし、大切な注意が1つあります。
大学入試の本番では、
「対偶を使うといい」
ということを自力で見抜く必要があります。
問題集や、定期テストなら「対偶を使えばいい」とあらかじめ分かりますが、
実戦は違います。
そのため、
問題の『(仮定)⇒(結論)』と、
対偶の『(結論の否定)⇒(仮定の否定)』では、
どちらが証明しやすいのか?
を素早く判断しないといけないのが本番です。
『否定』したらどういう命題になるか?
『否定』する前と後で、扱いやすい・示しやすい条件はどちらか?
をスムーズに判断するということですね。
当然、『否定』がどういう形になるか、
バリバリとイメージできないと始まらないですよね。
だから、命題の『否定』は素早く・正確に書けるよう、
訓練をしておきましょう。
最後に、『扱いやすい条件・扱いにくい条件』について、
参考となるイメージを伝えておきます。
『〇≠△』……扱いにくく、示しにくい。
→否定をとった『〇=△』の方が扱いやすく、示しやすい
『〇は無理数』……扱いにくく、示しにくい。
→否定をとった『〇は有理数』の方が扱いやすく、示しやすい
(有理数なら整数/整数でかけたり、四則演算で閉じたりしていて、
条件が多い。)
『〇〇は存在しない』……示しにくい。
→否定をとった『〇〇が存在する』の方が条件として扱いやすい
ポイント③ 結論を否定して、矛盾を導く『背理法』
次の証明テクニックは、『背理法』です。
『結論の否定』を仮定して、矛盾を導く
というのが背理法です。
特殊なのは、
「矛盾を導く」
がゴールであることです。
背理法のイメージですが……
あまりよくないのですが、
ミステリーのアリバイに例えてみます。
仮定 自分にはアリバイがある
証明したいこと 自分は犯人じゃない
【証明】
もしも、私が犯人だとしましょうか。
(↑『結論の否定』を仮定する)
すると、私は3時に、東京にいたことになるでしょう。
(↑『結論の否定』から推論する)
でも、私は3時には大阪にいたんです。
(↑仮定のアリバイから推論する)
これは矛盾していますよね、だから私は犯人ではありませんよ。
(↑矛盾を導けたので、否定する前の「結論」が正しいと主張する)
数学らしさには欠けますが、上記のような論法だと思ってOKです。
案外、身近(?)な議論でちょくちょく使われているのが背理法かもしれません。
ポイント④ 背理法は、『矛盾の導き方』に注目して勉強しよう
『結論の否定』を使うところは、対偶の証明でも背理法でも同じです。
対偶を使った証明は、スタートとゴールを少し取り換えはするものの、
証明の流れ自体は普通の証明と同じです。
一方、背理法は証明の流れ自体が特殊です。
特に、
「矛盾を導く」
ことがゴールである点が、他の証明法と異なります。
そのため、最初に背理法を見たときは、戸惑うのが普通です。
今までの証明とは、狙っている落としどころが全然違いますからね。
そんな背理法をマスターするためのポイントとして、
どうやって矛盾を導いているのか?
に注目して、証明を読み解くのをオススメします。
例えば、背理法の典型例として学習する
「√2が無理数であることの証明」
で考えてみます。
√2が有理数だと仮定して、
√2=p/q と置くのが初動ですが……
このときに、「pとqは互いに素」するのがミソですね。
最終的に、
『pとqが2を共通の約数として持つから、矛盾』
とするのがゴールです。
この、
どう矛盾を導いたのか?
というゴールに一番注目しましょう。
自力で、「√2が無理数」を背理法で示す場合、
ゴールとなる「矛盾」が見えているかどうかが大切です。
ゴールが曖昧だと、どこに進んでいいのか分からなくなりますからね。
こんな矛盾の導き方があった!
こんな矛盾が出てくるんだ!
というのを、色々な背理法に触れるたびに覚えていきましょう。
その積み重ねで、
「ここから矛盾が出せるな」
「あっちに行けば矛盾に辿り着くな」
という予想が立てられるようになってきます。
そうすると、段々と背理法が上手くなっていきますよ。
対偶を利用した証明は、仮定・結論を取り換えるだけで、
結局は通常の「証明力」がベースです。
一方、背理法は「矛盾を導く」という独特のゴール設定のため、
習得に時間がかかります。
「どうすれば矛盾が出てくるか?」
を考える必要があるのですが、
すぐには浮かぶようになりません。
最初は、証明の例を見ながら、
「こういう風に、矛盾が出てくるんだ!」
という点に注目し、知識を習得していきましょう。